久々の嶋田本ブックレビュー
突然ですが、『手編み』と聞いて思い浮かべるものはなんでしょうか?
グラニースクエアだったり、お母さんが編んでくれたベビードレス?レースのドイリー?…
きっと人それぞれ、十人十色なのでしょうね。
でもおそらく共通するのは暖かなイメージ、優しいイメージなのではないかと思います。
今回レビューする本の世界は、もしかしたらそのイメージとは正反対にあるかもしれません。
嶋田さんの作品は完成度が高く、かといって機械編みとは違う独特の雰囲気を醸し出しています。
特に図案のはめ込み方は完璧で、手を加えることは不可能とすら思えます。
他のデザイナーさんなどと違い、嶋田さんの経歴もまたユニークで元々は音楽家だとか。
なぜ音楽から編み物へ?という疑問はさておき、
この経歴は彼の作品を理解する上で非常に重要なファクターではないかと思うのです。
嶋田さんのプロフィールを拝見すると、どうやらクラッシック音楽の世界で活躍していた模様。
音楽の父バッハは、自身の人生を神に捧げ、音楽で神性を具現化する為にひたすら至高を目指していたとも言えます。
神に近づく行為というのは、古今東西完璧さが求められる世界。
(おそらく)神を具現化した曲ならば一音たりとも外してはいけないし、改変など許されないですよね。
うむ。個人的ではありますが、まさに嶋田さんのニット作品とイメージが重なるような…?
突然ですが、自分はそういった枠から外れたところにあるものに魅力を感じる人間です。
しかし、その世界観を窮屈に感じることがあるものの、作品には抗うことのできない魅力があります。
今回の本は作品を編む上でのプロセスやコツなどが書かれていて、まさに聖書のごとく?私を導いてくれます。
中でもスティークスの処理の仕方はなるほど!と思い、ちょうど編んでいたものですぐに試してみました。
今まで日本の出版物にはなかったのでは?と思うような、大変実用的な解説書でもあります。
それ以外にもアドバイスなどが小さな字でぎっしりと書いてありますが、臆せずじっくりと読むことをオススメします。
嶋田さんの思いが本の中に溢れかえっていますよ。
(自分はその毒気とも言えるような濃ゆい熱気?にあてられ、動悸、息切れ、眩暈がしましたがw)
多くの人のバイブルになり得る本だと思います。
中でもSlåtter(スロッテル)というコフタ=カーディガンに一目惚れ!
これは絶対欲しい!と思い、詳細を見るとゲージがかなりのキツめ。
J&Sの2plyで36目…!
シェットランドの糸に関していうなら、使っているうちに徐々に目が締まり密になるエイジングもまた魅力の一つ。
最初からカチカチに編むとカーペットみたいになっちゃうよ!と思うのは老婆心かな?(^^;
(実際に本の中にあるArabesqueという作品はAラインらしいのですがシルエットがかなり固いです)
個人的には、毛糸全般ふんわりと編んで空気を含むように仕上げたほうが暖かいと思いますし、
そういう風に仕上げるのを目標としています。
(ただし靴下の場合は例外です!編み目を密にして摩擦に耐えうるようにしっかりと仕上げたほうが長持ちしますよね。)
それにしても、この本は改めて編み物についてのあれこれを自分なりに考えるきっかけを与えてくれました。
ますます編み物の深淵へ迫っていけそうな感じです…。
(2019.10.23 改)